国民年金の財源を現在の保険料方式から税法式に変更すればよいと言う意見がありますが、税法式にする問題点として

(1)保険料の納付という直接的な義務の履行が無くなりますので、権利生が無くなってしまいます。

(2)保険料の滞納が無くなりますので給付総額が大きくなります。

(3)税務署と社会保険事務所では徴収能力に差はありません。

等の問題が考えられます。

(1)について
国民年金や厚生年金は憲法

第二十五条【生存権、国の生存権保障義務】
1  すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2  国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

から、直接発生する権利です。

第十三条【個人の尊重、生命・自由・幸福追求の権利の尊重】
 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。


従って法律で制限することができません。しかし、権利の発生の前提条件として義務の履行があります。国民年金においての義務の履行は「保険料の納付」ということになります。

この部分を保険料から税に置き換えたときに、国民年金保険料を国民年金保険税として徴収し、個人毎に保険税勘定を設けて管理していくのでしたら、権利性は保たれますが、個人を特定することなく広く一般から国民年金保険税を徴収する場合は、個人の義務の履行がなされたか否かが不明確になります。例えば、住民税の一部を国民年金保険税にするような場合です。世帯全体で見ると国民年金保険税は納付されていますが、専業主婦の方や学生さんの義務の履行が明確でありません。消費税方式の場合は、義務の履行は全く関係なくなります。

義務の履行が無くなると言うことは権利性が無くなると言うことになります。つまり、公的年金が憲法から直接発生する権利でなくなるということです。

憲法から直接発生する権利であるということは、法律で制限できない権利となるのですが、憲法から直接発生する権利でないのでしたら法律で制限できることになります。

例えば、国の一般会計が大きく赤字になるようなときに、国民年金の給付額を半額カットするような政策ができるようになります。

私達国民にとって、憲法から発生する権利であるかどうかは私達の権利を守るという観点からも非常に重要であり、国民年金が国政に左右されることなく安定して永続できる制度であるという点でも非常に重要になります。

従って、税法式を導入するにしても権利性を失するような方式は好ましくないと思います。