次に、若年層、具体的には20歳代の方々に施したさじ加減についてみてみましょう。

「30歳未満の保険料納付猶予制度」と呼ばれるこの制度は、学生の納付特例と同様に、条件にあてはまる人が申請するすれば、保険料の支払猶予が受けれる制度です。

学生の納付特例との違いは、学生の納付特例は年齢制限が無く、第1号被保険者で学生であり、所得要件等があてはまれば、50歳代の学生でも適用が受けれることに対して、30歳未満の保険料納付猶予はその名の通り30歳未満の第1号被保険者しか対象になりません。

また、学生の納付特例は国民年金法第90条の3に規定されているのですが、30歳未満の納付猶予は平成16年国民年金法附則第19条に規定されています。こちらの方がまさに「さじ加減」ですね。

若年層の保険料納付率の低さは国民年金に対する理解や信用度の低さに加えて、日本の景気の低迷により定職に就けないいわゆるフリーターやニートの増加により、この世代の保険料支払能力の一時的な低下が要因と思われます。また、フリーターやニートの方々はご両親と同居していることが多く、保険料の納付について、ご両親が世帯主として支払うことが多くあります。特に、学生の納付特例に対して30歳未満の納付猶予は実質的には対象となる年齢層が高いため、ご両親も高齢であり、年金受給世代に該当していることが多々あります。つまり、受給した年金で年金保険料を支払うとういう状態です。

そこで、この世代に対して平成17年4月から平成27年6月までの時限を区切り、納付猶予の制度を導入しました。

この制度の導入により、若年者の滞納問題の解消が図られました。また、本来学生であるのに無職と偽り免除申請を行っていた方々については、基本的には30歳未満の納付猶予に該当するようになり、支払猶予となりました。学生の納付特例と同様に、納付猶予の期間について保険料を納付しない方が保険料納付要件を問う必要が出てきたときに問題が発生します。

この様な方々については、さらなる「さじ加減」が必要かという疑問があります。納付猶予を最大限に適用するなら、20歳代の10年間保険料納付を猶予した後、30歳代に2カ月分ずつあるいはそれ以上のペースで保険料の支払いが必要となります。しかし、30歳代の世代は子育て世代の中心的世代となる世代です。この世代の負担が重くなると、合計特殊出生率の低下を誘引しかねません。特に30代のご夫婦の両方が長期間の納付猶予の適用を受けていた場合は、相当の長期間家族で4人分の国民年金保険料を支払うことになり、これに国民健康保険の保険料が加算されると、保険料だけでかなりの高額になってしまいます。また、社会保険加入者の場合でも2人分の国民年金保険料が発生することになり生活費を直撃してしまいます。

説例は極端な例ですが、学生であれ30歳未満であれ保険料の納付特例は支払猶予ですので後日支払う必要があります。つまり、追納を行っている期間について保険料の二重負担が発生します。現在が少子化社会なのかそれとも少子社会なのかはっきりしませんが、いずれにせよ子育て世代の負担はなるべく軽減するべきでしょう。

考えられるさじ加減として、納付特例そのものについては、学生・30歳未満双方の納付特例について、免除にならい4分の1納付特例、半額納付特例、4分の3納付特例を導入し、一部納付特例期間中については納付特例を受けた額の残りの額を納付するわけですが、納付できない月についは、全額納付特例とみなす制度はどうでしょう。実質的には、納付特例期間中に一部を随時納付する事ができる現在の制度と差異は少ないのですが、納付特例期間中における保険料納付の意識付けとしておもしろいと思います。また、納付特例期間中に一部でも納付することにより納付特例期間が経過した後、追納する期間における保険料負担が少しでも軽減できます。

追納の期間中については、納付特例期間の保険料に対する利息を一般の保険料免除期間の半額にする等も30歳代の世帯の負担軽減につながるでしょう。保険料に対する利息については保険料の納付を促進するためであり、また、本来の納期限にキッチリと納付した方との公平性を保つためという意味合いが強いものであり、利息収入自体が国民年金財政の収入の柱になっているわけではないと思いますので、特定の事由のある免除(学生及び30歳未満の納付特例)についてのみ、軽減することは案外実現しやすいかもしれませんね。

更に、追納期間を10年と限定せず60歳に達する日の前日まで延長することもいいかもしれませんね。30歳から40歳までの10年間に20歳から30歳までの10年分を支払うとなると、毎月2カ月分ずつ支払う必要がありますが、30歳から60歳までの30年間に20歳から30歳までの分を支払うとなると、各月の支払がぐっと楽になります。特に日本の家庭は総支給ではなく手取額で生計を考える傾向にありますので、社会保険加入世帯では、追納の負担感は一気に軽減されると思います。

もちろん、説例のように極端な制度の適用ではなく、例えば、20歳から24歳までフリーターをしていて30歳未満の納付猶予を適用した方などは、もっと各月の負担感が軽減され追納しやすくなると思います。