今までは、若年者で国民年金の保険料を納付することが難しい方々に対する「さじ加減」をみてきました。

今度は一般の方に対する「さじ加減」をみてみましょう。

国民年金の免除制度には法定免除と申請免除がありますが、法定免除については「さじ加減」の必要はありません。問題は申請免除です。従来申請免除は、免除か納付かの2者択一でした。国民年金の保険料は平成18年度は13,860円です。この、13,860円を納付するか免除するかの選択となるわけですが、自営業者のご夫婦などは、配偶者の相手方について国民年金の保険料の納付について連帯責任を負うことから、自営業者のご夫婦となると、13,860円×2人分=27,720円の保険料になります。国民年金の保険料について配偶者の相手方について連帯責任を負うと言うことは、例えば、ご主人だけを免除にして奥さんの分を納付するという取扱ができませんでした。つまり、27,720円支払うか免除をするかの選択となったのです。そこで、国民年金に半額免除の制度を導入し、少しでも支払いやすくしたわけです。続いて、4分の1免除、4分の3免除も導入しました。この結果、保険料免除は全額免除・4分の1免除・4分の2(半額)免除・4分の3免除の4通りとなり、所得要件等あてはまれば家計の状況に応じて支払える仕組みづくりをしてきました。

この制度の導入により、全額は納付できないが免除してしまうと将来に不安が残るという方が納付できるようになりました。

しかし、この制度の問題点として給付の面で計算が複雑になります。また、周知が行き渡っているとは言い難いという点があります。

「さじ加減」の問題点として、保険料の免除割合がご夫婦で同じになるという点です。これは、前述のように保険料の納付についてご夫婦の双方が連帯責任を負うため、相手方の納付責任を放棄して自分の保険料だけを納付することができないため、同じ免除割合になってしまいます。

しかし、現実のご夫婦では年齢差等により、ご夫婦の一方だけ優先的に保険料の納付を希望する場合があります。ご夫婦のどちらの保険料を優先するかとか、ご夫婦のうち若い方を優先するのか、逆に、高齢の方を優先するのか、あるいはフルペンションに遠い方を優先する等々ご夫婦の事情により、免除割合の希望は多岐に亘ります。

今後、配偶者の保険料の納付についての連帯責任は残しつつも、免除割合の任意の設定等の施策も必要になるでしょう。ただし、ご夫婦で免除割合を設定するときに、ご夫婦の一方が老後においても「経済的従属」を強いられることがあってはいけません。新法の施行は、このご夫婦の一方の「経済的従属」からの開放が目的にあったのですから、免除割合をご夫婦のお二人の客観的な合意なしに、免除の割合をご夫婦でかえることは、「経済的従属」につながりかねず、安易にご夫婦で免除の割合を変えることは国民年金の根幹をゆるがす問題に発展しかねません。従って、ご夫婦で免除割合を変える制度は必要でしょうが、導入には困難な問題があります。

ところで、これらの保険料の免除制度は保険料の納付が一時的に困難な方に対する制度です。つまり、保険料の納付が一時的に困難な状況になった方は種々の保険料の免除制度を申請していただければいいわけです。

保険料の納付が困難な方はいずれかの免除制度の対象になります。また。免除制度の対象にならなかったり、免除の対象になったが追納できない(学生の納付特例や若年者の支払猶予)の場合でも、国民年金はいつもフルペンションを求めているわけではなく、20歳から60歳までの40年間に25年以上の納付で権利の発生を認めています。また、40年間に25年以上の納付が行われなかった場合でも、合算対象期間や任意加入等で受給権が発生するように配慮しています。

すると、国民年金と使命として保険料の納付が困難な方にこれ以上の配慮が必要かという問題があると思います。どの程度の施策が必要であるかは時代の流れとともに変遷するものでしょう。しかし、いつの時代でも最小限の自己努力は必要であり、最小限の自己努力ができない方については、国民年金という保険制度で対応するのではなく他の社会保障制度に委ねた方がよいでしょう。