不明年金 5,000万件……。

ものすごい数字ですね。

日本の年金制度は20歳以上が強制加入ですので、20歳以上の約3人に2人の割合で年金が不明になっている・・・・そんなわけ有りませんね。

皆さんの年金は、基礎年金番号でしっかり管理されています。

では、5,000万件もの不明年金はどうして発生したのでしょう?

平成9年1月1日に、公的年金に基礎年金番号が導入されるまでは、国民年金と厚生年金で別々の番号を使っていました。また、転職したときなどに「年金手帳を紛失した」と言えば、新しい番号で新しい年金手帳が発行されることがありました。この時の新しい年金手帳に記載されている新しい番号が平成9年1月1日から基礎年金番号になったわけです。

すると、古い番号はどうなったのでしょうね? そうです。そのまま残っています。つまり不明年金となったわけです。

国民年金の第3号被保険者の制度ができたのは昭和61年4月1日からです。それ以前は、夫が会社員の専業主婦(又は妻が会社員の専業主夫ヘ(^o^)/)は、国民年金任意加入でした。

例えば、今年(平成19年)60歳になられる方(昭和22年6月1日生まれ)が高校卒業してから4年間会社員をして、厚生年金に加入にて、その後結婚退職したような場合は不明年金になりがちです。昭和61年4月までは専業主婦は国民年金任意加入でしたので、結婚後暫く国民年金に加入していなくて、30歳(昭和52年6月1日)から国民年金に加入した場合は、国民年金は、結婚後のお名前で加入することになります。この時に、旧姓で加入していた厚生年金の氏名変更の手続きをうっかり忘れると、厚生年金は不明年金となります。

公務員の方も気をつけてください。臨時職員で採用され、その後、本採用された方は、臨時職員の当時は厚生年金です。本採用されれば共済組合です。臨時職員の期間の厚生年金は不明年金となりがちです。

不明年金の原因は殆ど私達のうっかり忘れです。その時々にきちんと氏名変更の手続き等をしていれば発生しないはずなのですが、手続きをせずに放置した結果が大量の不明年金になっています。

不明年金があるということは、私達がうっかり手続きを忘れた年金についても、社会保険庁はしっかりと管理しているということです。つまり、問題は不明年金の数の多さではなく、私達のうっかり忘れの多さなんです。

そこで、平成9年に基礎年金番号を導入し、うっかり忘れがあっても不明年金にならないようにしました。ですから、平成9年以降は原則として不明年金はなくなりました。しかし、平成9年以前の分はまだまだ残っています。

平成9年以前の不明年金については、裁定請求の時にしっかり確認します。

裁定請求をするときに、学校を卒業してから60歳になるまでの職歴を確認させていただきます。この時に不明年金があれば分かるわけです。

例えば、先程の専業主婦の例で、厚生年金期間が不明年金となっている場合は、年金手帳の国民年金の資格取得日の欄に結婚後初めて国民年金に加入した日(昭和52年4月1日)が入ります。社会保険庁の記録も当然同じ日が入っています。

裁定請求の時に年金手帳を確認すると、この方は30歳からの年金記録しかないわけです。明らかにおかしいですよね。そこで、不明年金となっている30歳以前の記録を探します。この場合は旧姓で調べるとすぐに分かります。

転職を繰り返した人で、年金手帳を何冊もお持ちの人も沢山います。また、年金手帳を紛失した人もいます。マスコミ等で報道されているように、生年月日が間違っていたり、お名前の読み方が間違っている方も沢山います。しかし、この様な方々も、落ち着いて学校を卒業されてから60歳になるまでの職歴を確認していくと、殆ど不明年金はでてきます。安心して下さい。

余談ですが、お名前の読み方や生年月日の間違いは、殆どが事業所さんや私達社会保険労務士の記載ミスです。何度も確認して書類を作成するのですがどうしてもミスは発生します。最近ではお子さんのお名前の読み方が難しくなりました。また、お名前だけでは性別が分かりにくくなりましたので、性別の間違いも発生します。もし、間違いに気付かれましたらすぐに会社に連絡してください。

では、不明年金は調査すればなくなるのでしょうか? 答は「ノー」です。

ご本人や遺族の方からの申告がない限り不明年金は削除しません。すると、不明年金であって申告がなされない分はいつまでも不明年金として残るわけです。

今後増加すると見込まれる不明年金は、日本に来られた外国人の方の分です。日本に滞在中は公的年金強制加入ですので、被保険者となります。しかし、海外に帰られると、公的年金の資格は喪失されます。日本から出国後、公的年金の払い戻しの請求をされるといいのですが、何も手続きをされないと不明年金となります。

最近日本に研修や就労目的で来られる外国人の方が沢山います。この方々の年金記録を出国したからと言って削除してしまうわけには行きません。従って、不明年金は増え続けるわけです。

厚生労働省は外国人の方の不明年金を防止するためにも、諸外国と年金協定を結ぶように交渉しています。世界中と年金協定が結ばれると、外国人の方の不明年金は一気に減るでしょうね。